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mituhaのこと。

言葉遊びのショートショート。

いい知らせ

22時半を過ぎ、猫の額ほどの部屋の真ん中に、お布団をひいてぽそっと体を潜らた。ストレス発散には6分読書がいいとどこかの記事で読んで始めた寝る前の読書も2ヶ月目になる。

スマホYouTubeアプリで読書に最適なピアノBGMを選ぶと、聞いたことのない心地よいインストゥルメンタルが聞こえてきた。今日から読もうと選んだ『とりつくしま』の真新しいページをめくり、1行目を目で追い始めた途端、耳に馴染み始めたピアノの旋律を遮り、ウ ゙ウ ゙ウ ゙と短く電話の着信を知らせる。スマホいっぱいのモニターに大きく映された名前にどきりとする。瞬間出ようか出まいか迷って、出ることにした。

「久しぶりやな」

ちょっとくぐもった低音の声が聞こえてくる。

「久しぶり。どうしたん? 」

「最近、話してなかったなと思って。」

二つ隣の県に住む一つ年上のその彼は、一度いい感じになりかけ、バレンタインが近かったからチョコレートをあげたものの何だか気まずくなり、そのまま疎遠になった。

あ、ないんだな。ありよりのいい感じの距離だと思ってたのはこっちだけだったんだと、些細な悩みや元気ない時にあった電話もなくなった。それから1年半近く経つ。

なんの音沙汰もなく急に連絡が、しかも電話でくるのだから、いい知らせに違いないと思った。先越されたかと思って、不安になった。不安になるってことは、まだそんな気持ちがあるのかなと思ったり。相手にないなら意味がないと思ったり。

主な要件が分からないまま、休みの日もしんどくて家でグダーっとしてるよ、という至極他愛ない報告を終始している彼。単に、元気だったか?という確認と最近何してる?の確認だったらしい。昨年末、わたしがスマホの機種変更を機に、facebookもLINEもしなくなったから何の近況も分からなくなった。ただの安否確認なのかと解釈して落ち着いた頃、

「そろそろ寝るわ。また繋がれてよかった。そっち行く時、連絡するよ。」

って、そんな思わせぶり。なんかずるいな。でも、今日はなんか気分よく眠れそう。ドキドキしている気がするのは、ただの心臓のリズム。そう言い聞かせて目を閉じた。